認知症の診断があるという理由だけで、家族が本人に代わって介護施設の入居契約を自由に決められるわけではありません。 まず本人が理解しやすい方法で希望を確認し、契約内容を判断できる状態かを施設、医療・介護の支援者と整理します。判断能力が不十分で契約支援が必要なら、一宮市成年後見支援センターなどへ相談してください。

施設探しでは空室期限や退院日を優先しがちですが、住まいを移す決定は本人の暮らしへ大きく影響します。『認知症だから説明しても分からない』と家族会議だけで決めず、本人が落ち着く時間、言葉、写真、見学方法を選び、意思形成・表明・実現を支えます。

家族の役割と法的権限を分ける

場面家族ができる支援別に確認すること
候補探し生活歴と希望を共有本人の選択肢
見学質問を補助本人の反応・理解
申込情報整理・連絡申込者と権限
契約説明へ同席本人の判断能力・代理権
入居後希望の変化を伝える契約履行・金銭管理

家族は本人をよく知る支援者ですが、親子関係だけであらゆる契約の代理権が生じるとは限りません。施設から『ご家族の署名で大丈夫』と言われた場合も、署名欄が本人、代理人、身元引受人、連帯保証人のどれかを確認し、責任範囲を読みます。

本人が選べる説明へ小さく分ける

厚生労働省の意思決定支援ガイドラインは、本人意思の尊重、安心できる態度、家族関係や生活史の理解を基本にしています。料金表を一度に読み上げるのではなく、部屋、食事、入浴、外出、面会など生活場面ごとに写真や短い言葉で説明します。

午前は理解できても夕方は混乱する人、選択肢が多いと答えにくい人もいます。一回の返事だけを結論にせず、場所と時間を変えて同じ希望が続くかを確かめます。認知症の施設見学で困る場面を伝える方法も使い、できないことだけで本人像を作りません。

契約能力は診断名だけで決めない

認知症には状態の幅があり、買い物は難しくても住まいの希望を表せる場合があります。逆に会話が流暢でも、長期費用や解約条件を理解し続けるのが難しいことがあります。契約時点で何を理解でき、どの支援があれば判断できるかを具体的に整理します。

申込金、月額費用、追加サービス、退去条件、返金、医療対応は別々に説明し、本人の言葉でどう理解したかを記録します。入居契約のキャンセル条件も確認し、家族が急いで支払った申込金が本人の希望を固定しないようにします。

成年後見は施設名を決める制度ではない

一宮市は成年後見制度を、判断能力が不十分な人の財産管理や契約等を支援し、本人の権利を擁護する制度と説明しています。本人の現在の判断能力に応じ、補助、保佐、後見の区分があります。家族が選んだ施設へ本人を連れて行くための許可証ではありません。

後見人等が関わる場合も、本人の意思決定支援を行い、本人の生活歴や価値観を踏まえます。施設契約だけでなく、自宅売却や費用支払が必要なら権限の範囲がさらに重要です。申立て前に何に困っているのか、契約、財産管理、連絡調整を分けて相談します。

一宮の相談先へ資料をそろえてつなぐ

一宮市は成年後見支援センター、高年福祉課、地域包括支援センター、家庭裁判所を相談先として案内しています。最初から制度利用を決めるのではなく、本人の状態、現在の支援者、急ぐ期限、候補施設、資産管理、既存の委任関係を伝えます。

家族間で意見が割れている場合は、長男・長女の順や費用負担額だけで決めず、本人の希望と安全上の課題を中心に支援者会議を開きます。本人の前で結論を迫らず、施設側にも意思確認へ必要な時間と方法を共有してください。

本人が『家に帰りたい』と話すときは、その言葉を拒否として処理するだけでなく、家で続けたい習慣、会いたい人、不安な時間帯を聞きます。候補施設で実現できることと難しいことを一つずつ比べ、短時間見学や体験利用が可能か確認します。家族の負担軽減は重要ですが、その理由を本人の利益と同じ言葉に置き換えないでください。

面談記録には賛否だけでなく、本人が理解できた説明、迷った点、次に確認したいことを書きます。後日の状態変化や別候補との比較にも使える記録になります。

家族が今することは、①本人が選びやすい方法で希望を確認、②契約書の本人・代理人・保証人の欄と責任を区別、③権限に不安があれば成年後見支援センター等へ相談、の3つです。

本人の希望、認知症の状態、生活上の困りごと、医療・介護情報を整理したうえで、候補施設には意思確認の進め方と契約者の条件を個別に確認してください。

確認した一次情報

契約能力、代理権、成年後見の必要性は個別事情で異なります。施設、地域包括支援センター、成年後見支援センター、家庭裁判所等へ確認してください。